応急手当 First Aid
心肺蘇生法やAEDの取り扱い、各処置方法を学んでおくことで平時から緊急時まで対応できます。 図と文章でご説明いたしますが、消防機関で行ってい救命講習を受講され、より確かな救命活動ができるようにしましょう。 善意で実施した応急手当は、故意による重大な過失がない限り法的に責任を問われません。 もし、応急手当が必要な場面に出くわしたら、勇気を出し安全の確保は十分行い実施しましょう。
心肺蘇生法
容体把握
傷病者の耳もとで 「 大丈夫ですか 」 または 「 もしもし 」 と大声で呼びかけながら、肩を軽くたたき、反応があるかないかをみます。
呼びかけなどに対して目を開けるか、なんらかの返答または目的のあるしぐさがなければ「反応なし」と判断します。
反応があれば、傷病者の訴えを聞き、必要な応急手当を行います。
傷病者のそばに座り、10 秒以内で傷病者の胸や腹部の上がり下がりを見て、普段どおりの呼吸をしているか判断します。
心停止が起こった直後には、呼吸に伴う胸や腹部の動きが普段どおりでない場合や、 しゃくりあげるような途切れ途切れに起きる呼吸がみられることがあります。 この呼吸を「死戦期呼吸」といいます。「死戦期呼吸」は「普段どおりの呼吸」ではありません。
傷病者に普段どおりの呼吸がないと判断したら、ただちに胸骨圧迫を開始し、全身に血液を送ります。
胸骨圧迫
傷病者に普段どおりの呼吸がないと判断したら、ただちに胸骨圧迫を開始し、全身に血液を送ります。
胸の真ん中を、重ねた両手で「強く、速く、絶え間なく」圧迫します。 胸の真ん中に、片方の手の付け根を置きます。 他方の手をその手の上に重ねます。両手の指を互いに組むと、より力が集中します。
肘をまっすぐに伸ばして手の付け根の部分に体重をかけ、傷病者の胸が少なくとも 5cm 沈むほど強く圧迫します。
1分間に少なくとも 100 回の速いテンポで 30 回連続して絶え間なく圧迫します。
圧迫と圧迫の間(圧迫を緩めるとき)は、胸がしっかり戻るまで十分に力を抜きます。
小児に対しては、両手または片手で、胸の厚さの約 1 / 3 が沈むほど強く圧迫します。
人工呼吸(口対口人工呼吸)
30回の胸骨圧迫終了後、口対口人工呼吸により息を吹き込みます。
傷病者の喉の奥を広げて空気を肺に通しやすくします(気道の確保)。
片手を額に当て、もう一方の手の人差し指と中指の 2本をあご先(骨のある硬い部分)に当てて、 頭を後ろにのけぞらせ(頭部後屈)、あご先を上げます。(あご先挙上)
気道を確保したまま、額に当てた手の親指と人差し指で傷病者の鼻をつまみます。
口を大きく開けて傷病者の口を覆い、空気が漏れないようにして、息を約1秒かけて吹き込みます。 傷病者の胸が持ち上がるのを確認します。
いったん口を離し、同じ要領でもう1回の吹き込みます。
2回の吹き込みで、いずれも胸が上がるのが理想ですが、もし、胸が上がらない場合でも、 吹き込みは2回までとし、すぐに胸骨圧迫に進みます。
人工呼吸をしている間は胸骨圧迫が中断しますが、 その中断時間はできるだけ短くなるようにしてください。
感染防護具(一方向弁付きの感染防止用シートあるいは人工呼吸用マスク)を持っていると役立ちます。
傷病者の顔面や口から出血している場合や、 口と口を直接接触させて口対口人工呼吸を行うことがためらわれる場合には、 人工呼吸を省略し、胸骨圧迫のみを続けます。
心肺蘇生(胸骨圧迫と人工呼吸)の継続
胸骨圧迫を 30 回連続して行った後に、人工呼吸を 2 回行います。
この胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせ(30:2 のサイクル)を、救急隊に引き継ぐまで絶え間なく続けます。
胸骨圧迫を続けるのは疲れるので、もし救助者が二人以上いる場合は、 1~2分間程度を目安に、胸骨圧迫の役割を交代するのがよいでしょう。
心肺蘇生を中止するのは心肺蘇生を続けているうちに傷病者が目を開けたり、普段どおりの呼吸をし始めた場合です。
AEDの使用手順
AED にはいくつかの種類がありますが、どの機種も同じ手順で使えるように設計されています。 AEDは電源が入ると音声メッセージと点滅するランプで、あなたが実施すべきことを指示してくれますので、 落ち着いてそれに従ってください。
可能であれば、AED の準備中も心肺蘇生を続けてください。
AED を傷病者の近くに置きます。ケースから本体を取り出します。
AEDのふたを開け、電源ボタンを押します。ふたを開けると自動的に電源が入る機種もあります。 電源を入れたら、以降は音声メッセージと点滅するランプに従って操作します。
電極パッドは、胸の右上(鎖骨の下)および胸の左下側(脇の 5 ~ 8 cm下)の位置に貼り付けます (貼り付ける位置は電極パッドに絵で表示されていますので、それに従ってください)。
電極パッドを貼り付ける際にも、可能であれば胸骨圧迫を継続してください。
電極パッドは、肌との間にすき間を作らないよう、しっかりと貼り付けます。アクセサリーなどの上から貼らないように注意します。
成人用と小児用の 2 種類の電極パッドが入っている場合や、成人用モードと小児用モードの切り替えがある機種があります。その場合、 小学生以上には成人用の電極パッド(成人用モード)を使用し、未就学児には小児用の電極パッド(小児用モード)を使用してください。 成人には、小児用電極パッド(小児用モード)は使用しないでください。
電極パッドを貼り付けると“体に触れないでください”などと音声メッセージが流れ、 自動的に心電図の解析が始まります。このとき、 「みなさん、離れて!!」と注意を促し、誰も傷病者に触れていないことを確認します。
ショックは不要ですなどの音声メッセージが流れた場合は、 ただちに胸骨圧迫を再開します。
AED が電気ショックを加える必要があると判断すると ショックが必要ですなどの音声メッセージが流れ、 自動的に充電が始まります。充電には数秒かかります。
充電が完了すると、ショックボタンを押してください などの音声メッセージが出て、ショックボタンが点灯し、充電完了の連続音が出ます。
充電が完了したら、「ショックを行います。みなさん、離れて!!」と注意を促し、 誰も傷病者に触れていないことを確認し、ショックボタンを押します。
ショックボタンを押す際は、必ず自分が傷病者から離れ、誰も傷病者に触れていないことを確認します。
電気ショックが加わると、傷病者の腕や全身の筋肉が一瞬けいれんしたようにビクッと動きます。
電気ショックが完了すると、“ただちに胸骨圧迫を開始してください”などの音声メッセージが流れますので、 これに従って、ただちに胸骨圧迫を再開します。
AED を使用する場合でも、AED による心電図の解析や電気ショックなど、 やむを得ない場合を除いて、胸骨圧迫の中断をできるだけ短くすることが大切です。
心電図の解析⇒電気ショック⇒心肺蘇生の再開⇒心電図の解析の繰り返しとなります。
救急隊に引き継いだり傷病者が目を開けたり、あるいは普段どおりの呼吸が出現した場合心肺蘇生を中止します。
出血の程度及び対処法
毛細血管性出血 切ったり、すりむきなどで、赤色の血がにじみ出る場合は、毛細血管からの出血なのでばんそうこうなどを貼って対処します。
静脈性出血 どす黒い血が継続的に流出しているときは、静脈性出血です。短時間で大量出血することはまれで、清潔な布や包帯で傷口を押し当止血します。
動脈性出血 赤い血液が、心拍のリズムで噴き出しているときは、動脈性出血です。大量出血により50%失うとすると死に至ります。 すぐに救急車などを要請しましょう。その場の応急処置として最も有効なのは、患部を厚手のガーゼなどで直接圧迫して止血する直接圧迫法です。 十分な効果が得られない場合は、患部と心臓を結ぶ動脈を親指などで圧迫する間接圧迫法で止血します。
骨折対処法
応急処置1冷やす氷を入れた袋(氷のう)などで冷やします。 氷のうをあてるときは、凍傷を防ぐためタオルなどでくるみ、直接あてないようにしましょう。
応急処置2心臓より上に挙げて安静を保つ できるだけ腫れを抑えるために、可能なら骨折部を心臓より上に挙げます。また、悪化を防ぐために安静を保ちましょう。
応急処置3添え木になるものをあて、包帯や布で固定する固定することにより、 骨折部の安静を保つことができます。きつくしばりすぎないように注意しましょう。(きつくしばりすぎると、血流を妨げる危険があります)
傷があってそこから折れた骨が見えているような場合(開放骨折)や、高所からの落下などで大きな骨折損傷が予想される場合、 命が危ぶまれる場合はすぐに救急車を呼び、専門的な骨折治療が行える病院に運びます。 とくに開放骨折は、受傷後8時間以内が治療が望ましい。
やけどの程度及び対処
やけどの深さの判別
1度 表皮層 肌の色が赤くなる 痛みと、ひりひりする感じ
2度 真皮層 肌は腫れぼったく赤くなり、水ぶくれになるところもある 真皮浅層の障害(浅2度)では強い痛みと、やけるような感じ 真皮深層の障害(深2度)では痛みや肌の感じがわからなくなる
3度 皮下脂肪組織 肌は乾いて硬く弾力性がなく、青白くなり、場所によっては焦げている 痛みや肌の感じがわからなくなる。
やけどの処置 やけどした部分を衣類の上から水で冷やし、患部に刺激を与えないように、タオルケットやバスタオルなど、十分な厚さがある清潔な衣類で包みます。 その後、できるだけ早く医師の治療を受けます。
凍傷
第1度肌の変色に加え、しゃく熱感やうずくような感覚、部分的・全体的なしびれ感、そして時に激しい痛みを伴う
第2度治療が行われないと凍傷に冒された肌は徐々に黒くなり、数時間後には水疱が生じる。
第3度患部や血管が高度に傷害されると壊そが起こり最終的に切断が必要となることがある。程度が著しい場合は筋肉や骨にまで壊死が起きる。
処置
凍傷部位に対しては、急な加温を避け、少しずつ温度を上げて行くのがよいとされていたが、その後、早急に加温する方が効果的であると認識されています。
凍傷を治療するときは患者を温かい場所へ移動して治療を受けさせる。凍傷部位は40℃から42℃くらいの湯に浸けるか、それが不可能な状況なら凍傷に冒されていない人の肌に接触させて温める。これは患部に知覚と運動機能が戻るまで続けるが、この過程で神経が解凍されるに伴ってしばしば激しい痛みが生じる。凍傷部位に含まれる氷の結晶が周囲の組織を傷つけるおそれがあり、決して凍傷部位をこすったり、たたいたり、振ったりしてはならない。温める処置は一定時間継続して行わなければならない。一度溶けかけた後に再凍結すると損傷をさらに悪化します。
突然死を防ぐために
子どもの突然死の主な原因は外傷、溺水、窒息などの事故ですが、 その多くは日常生活の中で十分に注意することで予防できるものです。
心臓や呼吸が止まってしまった場合の救命処置も大事ですが、何よりも突然死につながるような事故を未然に防ぐことが一番効果的です。
動悸や失神の経験があったり、若い年齢で心臓が原因で突然死を起こした家族がいる場合は、 専門医を受診しておくことも重要です。
乳児の突然死の原因として知られている乳児突然死症候群は、 家族の喫煙やうつぶせ寝を避けることでリスクを下げることができるといわれています。
成人の突然死の主な原因は急性心筋梗塞や脳卒中です。
急性心筋梗塞や脳卒中の場合は、その初期症状に気付き、少しでも早く病院に行って治療を始めることが重要です。
自力で病院に行こうとすると、その間に悪化して致命的になることもあります。
心臓や呼吸が止まる前に 119 番通報をして救急車を呼ぶことができれば、助かる可能性が高くなります。
傷病者本人は 119 番通報を遠慮することもありますが、以下のような症状が急に起こったら、強く説得して、 ためらわずに 119 番通報をしてください。
119 番通報をしたら、救急車が来るまでそばで見守り、容体が変わらないか注意していてください。
万が一、反応がなくなり、普段どおりの呼吸もなくなったら、ただちに心肺蘇生を開始してください。
急性心筋梗塞
急性心筋梗塞は、冠動脈と呼ばれる心臓の筋肉に血液を送る血管が詰まることによって生じます。 急性心筋梗塞になると、大事な心臓の筋肉が死んでしまい、心臓の動きが弱まったり、心臓が突然止まってしまう不整脈を起こしたりします。
急性心筋梗塞の症状には、「胸の真ん中に突然生じて持続する強い痛み」「胸が締め付けられるような重苦しさ・圧迫感」 「胸が焼けつくような感じ」などがありますが、この症状は必ずしも胸だけに起こるとは限りません。
人によっては、肩、腕やあごにかけて不快感を訴えることもあります。重症の場合は、痛みだけでなく、息苦しさ、冷や汗、 吐き気などがあり、立っていられずにへたり込んでしまうこともあります。
症状の強さにも個人差があり、高齢者や女性、糖尿病の人では症状が軽く、わかりにくいことも少なくありません。
脳卒中
脳卒中は、脳の血管が詰まったり、破けて出血したりすることによって生じます。脳の血管が詰まると、脳に血液が行かなくなるので、 そのままだと、脳梗塞といわれる状態になります。脳梗塞になると脳の神経細胞が死んでしまい、脳梗塞の部位によっては、 体の片側に力が入らなくなったり、しびれを感じたり、言葉がうまくしゃべれなくなったり、ものが見えにくくなったりします。
最悪の場合は、目が覚めなくなり、呼吸が止まって死んでしまいます。また、脳の血管が破けて脳の表面に出血するとクモ膜下出血という病気になり、 生まれて初めて経験するような非常に強い頭痛に襲われます。重症のクモ膜下出血では、意識を失い、しばらくして意識が戻ってから頭痛を訴えることもあります。
クモ膜下出血は、繰り返して出血することが多く、そのたびに症状が悪化し命の危険が増していきます。